経費

取引企業の見直しを定期的に実施していますか。

まずはそんな一般的なことかと言われそうな事項からですが、ご存じのようにこれがなかなか面倒な作業です。お付き合いや柵や政治的圧力などがある場合などもあって腰を上げるのが大変な非常に億劫な作業です。ただこれは十二分におわかりのことだとは思いますが、単純に客室一部屋当りの清掃費用が600円から580円になっても年間では莫大や経費節減になりますし、歯ブラシ一本も15円から12円になっても大きな違いがでます。それはわかっているけれど・・・というお気持ちもよくわかりますが、皆さんのホテルもやはり大ナタを振るう時期に来ているのではないでしょうか。
多くの場合、それぞれの契約自体が何年も(場合よっては何十年も)前の契約でそれが単純に自動延長になっているというケースがよくあります。気づくと事前告知の時期を逃していたり、事前告知の時期まで時間があってそれを日常の忙しさの中で忘れてしまったりで、なかなかいいタイミングにはなりにくいものです。
そこで、まずやらなければならない作業は「依託先企業一覧」の作成です。そこには企業名、担当者名、住所などとともに契約締結年月日と契約満了日を加えます。そのリストを基にじっくり時間をかけるしかありませんが、同時に契約書も今一度じっくり読み込んでこれからの見直し計画を立てるべきです。まずは依託先企業一覧を作りましょう。

実際の契約を見てみましょう。
ホテルを運営するにも実に多くの企業との取引が必要です。見直し可能なものをざっと揚げると、
 客室清掃・館内清掃(パブリックスペース)
 施設管理(建物・エレベーター・自動ドアなど)
 リネン
 ルームアメニティ(客室消耗品)
 食材・飲料仕入れ
 事務消耗品
 自動販売機
 駐車場
 テレビ
 植栽管理
 ゴミ処理・産廃処理
 電気・水道

ただし、権利関係が介在し単純な企業選定の見直しに適さないものもある。
 印刷物
 ホームページとその管理
(注)撮影済みの写真などは権利を得ていない場合は厄介で、HPで新たに使用することにより「想定外」として別途、使用料を請求されることもあるので注意が必要です。

そしてこれからが大変面倒な作業となります。先に述べたように様々な障害が出てきますので、ほんとうに面倒です。できれば触らずにおれば仕事も増えず精神的にも楽です。ただ結果的には一時の生みの苦しみを乗り越えられば、直接、純利益に響く経費節減なので前向きな姿勢と若干の勇気をもって立ち向わなければなりません。

以下に実例を上げます。

具体例① 客室清掃の見直し
ホテル単独の契約見直しでも効果は期待できますが、もしグループで契約という方向ならばさらに大きな効果も期待できます。以下の事例の場合、それぞれ3社(現行の企業も含め)から相見積りを取った。

○東京のビジネスホテル(118室)
清掃単価一室当り  550円 ⇒ 520円
118室で稼働率が70%でも年間で90万強の削減。但し、グループホテルすべてが同一の企業と契約するという条件付き。

○名古屋のビジネスホテル(179室)
清掃単価一室当り  470円 ⇒ 450円
稼働率の上昇に伴いギャランティ(最低保証部屋数)を上げる代わりに単価をダウン。

具体例② 施設管理(三社から見積もり)
A.管理者常駐の場合。
○名古屋のビジネスホテル(156室)
月間人件費 99万円 ⇒ 88万円 年間で132万円の削減。
B.グループ管理ができる場合(ホテルが同地区に二軒以上)
○東京のビジネスホテル(5店舗が別々に契約)
月間依託人件費 175万円 ⇒ 120万円
中心的なホテルに常駐させて他のホテルを巡回させる方式。
一店舗当り35万円の負担が24万円の負担に軽減。
一ホテル当り年間132万円の削減。
(注)巡回方式だとどうしても施設そのものに対する施設管理者の知識が深まらず弊害も多い。これについては施設管理でより詳細に。

具体例③ 自動販売機(二社から見積もり)
企業として~~系などの柵がなければ、自販機の管理会社を見直すことにより手数料収入が上がる。
○成田のシティホテル(546室)
A社からB社に変更することにより手数料 10% ⇒ 20%
基本的はビールのブランドが変わっても大きなコンプレにはつながらないし、たった10%でも塵も積もれば山です。

具体例④ ゴミ処理・産廃処理(三社から見積もり)
通常、1キログラム当たりいくら?という形態であるので、また出張費用を抑えるためにも周辺のホテルと共同で委託するとよりメリットがある。
○実八王子市のビジネスホテル(198室)
ごみ処理企業の見直し 月間10万円 ⇒ 月間8万円

具体例⑤ 電気料金・ガス料金
これらの費用は電気をまめに消すとか、シャワーなどに節水弁を付けるなどの方式で節約に努めるということになりがちですが、各電気会社との契約の見直しでも節減となる場合があります。電気あるいはガスは契約上の最低使用量の設定を単に変更するたけでも節約となる場合があります。
○宇都宮のビジネスホテル(115室)
東京電力との契約の見直し(最低使用量の見直し)
月間15万円の節減
東京ガスとの契約の見直し(最低使用量の見直し)
月間 5万円の削減
節水弁などについては顧客満足度の点から問題があると思っているがこれは別項で述べる。いずれにしても単純な契約内容の見直しなので東京電力の営業担当者と話をすればそれで済む話。しかも私の場合、優秀な施設管理担当者がやってくれたので、とても安楽な見直しでした。これは意外と気がつかない点でこれらの契約は見直し不可能なものを思われてですし、またいる方もいるかもしれませんが、特に上から目線の契約となっているわけではありませんので、ぜひ担当営業マンと話をしてみてください。電気やガスの契約ではことによってはオープン以来同じ契約でたとえば稼働率も変わっているであるとか、レストランをアウトソースしてその費用は委託先が持つためにホテルとしての全体の使用量が変わっているなど、構成要件が様変わりしている場合などはこのような見直しが可能になります。

具体例⑥ 水道費
私がこれまでトライしてきた経費節減の中でもこのケースが最も大きな削減幅を達成しました。トイレの節水についてですが特に地域性が影響する方法ではありません。もし、トイレの水がタンク式であれば、というお話です。名古屋のホテルのケースですが、156室のホテルで31年前に建てられました。トイレには現在はウォシュレットがついておりますが、コモードの形態は古いタンク式でした。ご家庭でも節水のためにタンクの中にペットボトルを沈めることで水の流れる量を抑えようとしますが、2リットルのペットボトル一本がやっと。二本入れようとしても入らない場合もあるようです。このホテルでは流水量を調べたところ平均で15リッターの水が流れていました。
一泊の間にお客様が三回トイレを使用したとします。これで3X15=45リッター。これに加えて清掃時に清掃スタッフがやはり2回、清掃のために水を流したとします。これで30リッター。合計すると一日当たり75リッターの水が一室につき消費されていることになります。果たしてトイレでは一回に15リッターもの水が必要なのでしょうか。最新式のトイレでは約5リッターで済むそうです。もちろん水流やトイレの形状など最新式のトイレには工夫も多くあって、だからこそ5リッターでも問題ないのかもしれません。調査の結果、古いタイプのトイレであってもだいたい8~9リッターの水が流れれば問題ないことが判明しました。ここで、登場するのがタンク式トイレ用の節水弁です。
この商品以外にも同類のものがあるかもしれませんが、静岡県の企業が開発した節水弁で水量の多寡を調節できます。また契約形態がリース契約でしたのでイニシャルコストがほぼ0円で導入することができました。加えて月々の節減額に目標を定め、もし節減額が目標に達しない場合はペナルティとしてその差額を補てんしてくれるという自信に溢れた商品です。これによって以下のような節減が水道料金について実際に見ることができます。実は下記の二年間では稼働率が前年よりもアップしたため売上見合いの増加が水道料金にあってもおかしくないのですが、それが稼働率が上がったにも関わらず水道代が下がるという現象となりました。
修繕費は費用計上されていますか。
どのくらいの金額を修繕費として計上すべきでしょうか。これはもちろん、建物の古さにもよって大きく変わる可能性はあります。ただ、基本的には総売上の2~3%くらいでどうでしょう。修繕費は設備投資とは異なり短期的で資産の改良とまでは言えないような修理に要する費用のことを言う。総売上が3億であれば3%で月90万円、年間で1080万円となります。修繕費と設備投資のどちらに入るかは個々に検証しなければならず、これは経理担当者や専門の税理士さんのお仕事になります。客室の椅子を買えば設備投資で、椅子の張り替えをすれば修繕費となります。PLに反映するのも修繕費(PLの項を参照)ですから、その住み分け(正しくは仕訳ですが)はホテル運営者にとっても大きな問題になります。
計上方法などは専門の方に任せるとしても、ホテルを運営する者にとってはその品質の維持・向上は非常に重要な仕事の一つです。正面玄関のドアのペイント一つをとっても、それがはがれていれば第一印象を大いに悪くします。フロントの対応がどんなに素晴らしくとも、とてもいい気持ちでチェックインした後に乗ったエレベーターのボタンが割れていてもお客様をがっかりさせます。実は日々のちょっとしたメンテナンスが長い目でみれば品質の維持に大きな違いをもたらします。それについてはホテルのスタッフにメンテナンスの担当者でもいればそれに越したことはありませんが、なかなか小規模のホテルでは専門のスタッフも置けません。また、施設管理を業務委託でもしてスタッフが常駐するような契約も結べず、スポット的にどこかが壊れれば直すという形にならざるを得ず、建物をトータルでしかも長期的な視点でメンテナンスを見てもらえるような状態に多くのホテルではなっていません。
もちろん専門のスタッフがいればそれに越したことはありませんが、スタッフがいないと言って等閑にできる問題でもありません。ことメンテナンスについてはホテル管理者も常に様々目を配るべきだし、点検業務なども怠るべきではありません。往々にしてスタッフの中には日曜大工好きのようなスタッフがいるはずなので、そのスタッフを指名してメンテナンスに心配りさせることでも十分でありましょう。ちょっとしたペンキ塗りや壁紙の剥がれの修復も、お客様満足度のアップには欠かせない作業です。最近では壁紙補修のための専用の接着剤や「家具職人」という商品でタッチペイントのようなものあって、日々のメンテナンス道具として活用できます。しかしながら、どうしても素人仕事にはなってしまう状況、つまりはそんなに器用なスタッフがいない場合には、やはりプロに任せるのが一番です。安直な修理はかえって見苦しい場合もありますし、長持ちもしない場合もあります。
そこでお勧めするのが、地元のビル管理会社や工務店に頼ることです。管理会社については「施設管理」の項で詳しく述べますが、当然のことながら、契約となればそれなりに費用もかかりますし、何もなくともかかる費用とも見なせます。できることであれば、地元の小回りの利く工務店さんとお付き合いを密にして、ちょっとした修理や修繕をお願いできる環境を作っておくことが理想的です。私の経験したケースでは、工務店の方には壁紙の張替え、カーペットの張替え(タイルカーペットなら素人でもできますが)、トイレの修理や交換など本当に一つ一つのお仕事でお願いできる方がいたので、非常に助かりました。ホテルにおける修繕は何も大規模修繕ばかりではなく、ちょっとした修繕、しかも迅速な修繕であれば客室も無駄にアウト・オブ・オーダーにすることなく、すぐにでも販売できるため、修繕費を取り返すにもより短時間ですむことがあります。
修繕費をけちることにより、かえって販売可能部屋数を減らすことになれば、それはすなわち室料収入の減となります。多くのホテルで見られるのは、修理する予算がないからという理由だけで、アウト・オブ・オーダーの部屋数をいたずらに増やしてしまっているホテルです。ホテルマンとして当日に売り残しを残すことも恥ずかしいことではありますが、経営者や支配人としては販売不可能部屋があるということも大いに恥ずべきことと考えるべきです。冒頭で月に90万円の修繕費という例を出しましたが、仮に10万円の修繕費であっても賢く使うことにより、販売可能部屋数を増し収入を上げることは可能なはずです。タイルカーペットは30センチ角のものでも安価なものであれば300円程度のものもあります。カーペットが汚くて販売できないという部屋が一部屋でもあれば、即、タイルカーペットに交換すべきです。単に修理するという意味合い以上に修繕費の存在は売り上げ増のために欠くことのできないものですので、ぜひ、予算取りしてください。

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