総論

空きテナントスペースはありませんか。

あえて申し述べるまでもないかもしれませんが、ホテル本来の売上部門については売上が伸びればその分費用も増えます。PLの会議などでさも言い訳するがごとく、「応分の費用増となりました。」という報告を私も何度もいたしました。もちろんこじつけの言い訳ではなく、あくまで正当に客室売上が伸びれば清掃費やリネン費が増えますし、レストランの売上が増えれば食材コストが上がるわけです。原価処理も終わっている在庫を抱えていてそれがたまたま今月全部吐けたというような都合のいい話はホテルには存在せず、どうしても売上増には費用増がついてまわります。
ところがテナント収入については上記の方程式の例外になります。これもよくご存じのように、テナント収入はほぼ*純利益です(ネットプロフィットとも言います)。営業収入の中でもほぼ費用を伴わないので、この収入をほおっておくわけにはいきません。もし、テナントスペースとして貸し出せる場所があるならばぜひ、テナントを探すべきです。「ほぼ」と述べたのは貸出後の費用負担はほとんどありませんが、貸出前にはその場所の整備、それから貸出が決まった後などは「大家」としていわゆる*「A工事」の負担が必要です。したがって初期費用はある程度かかってしまいますが、それでもその後は月々定期的に定額の「純利益」が入ってくるわけとなります。
私がホテルニューオータニに在籍時、ホテルとしては先見的に「ガーデンコート」というオフィスビルをニューオータニは建設しました。本来、売上は三部門から成り立つホテル業に新たに「テナント収入」という「第四」の部門を立ち上げ、その後のホテル経営に多大な貢献をすることになりした。その意味で先見的で、この例は帝国ホテルのオフィスタワーにも同じことが言えます。笑い話ですが、その当時、社長室におりました私に社長が「ガーデンコートが好調だから、本館も新館(ホテル)もオフィスビルに替えようか?!」と冗談を仰いました。続いて「そうするとまず、あなたたちがいらない!」。スタッフ皆で大笑いしましたが、ちょっとぞくっとする話しでした。つまりは純利益に特化する部門に替えてしまうほうが、売上見合い費用が伴うホテル業よりも割がいいという話で、笑い話ではありますがテナント収入の重要性を表す話しとなっています。
本題に戻って、それではどうやってテナントを探すのか。大々的にオープンしたオフィスビルなどであればそれほど苦労はかからないかもしれませんが、ホテルの中にそのようなテナントスペースがあるということを、広く一般に知らしめるにはどうすればいいでしょうか。ホテルの正面玄関などに「テナント募集中」と看板を掲げてもいいかもしれませんが、体裁上難しいホテルもあるかもしれませんし、ホテルの前に通行量の多い道路でもあれば別かもしれませんが、なかなかその看板だけで周知できるとも限りません。では何をするかというと、不動産屋へのセールスです。周辺の大手の不動産屋でテナントスペースを扱っている企業に依頼してテナントを探す努力をすればいいのです。もちろん手数料はかかりますが、我々はホテルマンなので不動産賃貸契約ですらできないので、そこはやはり専門家に任せることが最も近道だと思います。
手数料を嫌うお話もよく聞きます。これについては「エージェント」の項でも述べますが、これは一種の宣伝費でもありしかも支払は一度だけですので、それ受け入れるべきです。加えて不動産業にとってはそれが「生業の糧」ですから、彼のモチベーションのためにも極力すんなり受け入れてテナント獲得に邁進すべきでしょう。私の経験でも不動産屋に仲介させず、ホテルと借り手だけで交渉を進め契約書などはどちらかの弁護士に作成させて契約したという例を見ました。ところが、借り手と何らかのトラブルが発生するとより多くの負担がホテルにかかってしまうような状況となるようです。もし不動産屋がいれば中立の立場から問題を解決したり仲裁してくれることになりますし、彼らの数多くの経験が大きく物言う場合もあります。大手のホテルチェーンなどで法務部とか総務であるとか不動産契約に長けているスタッフを抱えているならばいいですが、独立系のホテルなどでは借り手の開拓や将来の問題解決なども含めて不動産屋に業務委託すできです。そして初期費用の計上後は、毎月定額で家賃収入があるわけですから、ぜひ空きスペースがあれば不動産屋に「営業」すべきでしょう。ホテル全体のPLから見ると、テナント獲得は総人件費の削減に大きく寄与します。
宿泊人件費を部門別で算出している場合は別ですが、ホテル全体の総人件費の観点からすると、ホテルの規模が小さいあるいは総売り上げが小さければ小さいほどそのインパクトは大きくなります。またより収入割合を明確にするためにも収入項目としては「その他売上」に埋没させることなく、「テナント収入」という項目を新たにつくるべきです。具体的には、以下の実例の中にもありますが、およそ3億の総売上のホテルでも500万円のテナント収入が増えれば、やや大雑把ですが総人件費率は0.5%下がります。また、6億のホテルで月額120万円の契約が取れれば、総人件費は0.8%下がります。経費節減にはこのような「塵」を積もらせるしかありませんので、経費増を伴わないテナント収入の獲得には大きな意味があるのです。
<実例>
Aホテル: 地下の会議室 : 居酒屋をテナントに : 20万円の家賃収入
Bホテル: 一階の旧レストラン : 鉄板焼きレストランをテナントに
: 40万円の家賃収入
Cホテル: 二階の旧宴会場 : ダイニングバーをテナントに
:120万円の家賃収入

関連記事

  1. 総論

    海外のネットエージェントも契約していますか。

    海外のネットエージェントについてはアレルギーを持っている方もいらっしゃ…

  2. 総論

    プライスコントロールをしますか、しませんか。

    正直申し上げて、私はRevenue Management という言葉が…

  3. 総論

    ポジショニングを客観的に把握していますか

    現状分析をしようとするとなるとよくセミナーなどで行う「SWOT」をしま…

  4. 総論

    団体予約の引き合いにはいつでも回答できますか。

    規模の大きいホテルやチェーン展開しているホテルの本部組織などには、人事…

  5. 総論

    売上増と経費減、どちらが優先課題?

    これについてはそれぞれのホテルでの事情もあると思います。稼働が高い割に…

  6. 総論

    営業をしていますか

    大手のホテルや大手のホテルチェーンは組織上、営業部門が存在します。それ…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

無料ガイドブック公開中

おすすめ記事

最近の記事

  1. 《コラム》シャンプー・リンスの消費量
  2. 《コラム》宿泊特化型ホテルのフロントの適正人数
  3. 《コラム》大手チェーンホテルの落とし穴。
  4. 《コラム》 キャンセル料は取れないか。
  5. 会計システムへの仕訳は自動で行えますか

アーカイブ

  1. 施設管理

    狭いバスルームに何か対策しましたか。
  2. 宴会

    ホテルの宴会の将来性はありますか。
  3. 総合

    自社ホームページに期待しますか。
  4. 宿泊

    売上予想(フォーキャスト)は行っていますか。
  5. 施設管理

    宴会場の改装をする必要がありますか。
PAGE TOP